つぶろぐ。

その時の自己顕示欲に忠実。

えっちな統計学入門 〜性癖アンケートを統計で紐解く〜 Part.2 因子分析編

注意:この記事にはR-18要素が存分に含まれます。(あくまで話題だけで画像とかは出ません)無理な人は自衛しましょう。 

 

つぶグミはいいぞ。( @kirsch2293 )です。

 

昨年の大晦日に公開したGoogleフォーム「『性癖』に関する意識調査」

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前回の記事では、「平均値」「標準偏差」「相関係数という3つの視点から、オタクたちの持つ多種多様な性癖を考察してきました。ここからは、統計学的な手法である「因子分析」「クラスタ分析」を用いて、数多ある性癖や、様々なオタクを「分類」することをテーマにしていこうと思います。中でも、第2回では「因子分析」によって性癖を分類し、似た性癖のオタクを分類するための「性癖尺度」を作成することを目標とします。

 

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今回の記事はそれなりに専門的な統計学を扱いますが、全くその分野に詳しくない人でもなんとなくは読めるくらいのレベルまで噛み砕いて話すことを心がけています。その結果かなり長くなってますがお許しください。統計学「因子分析」で検索して「運悪くこんな記事を踏んでしまった人」が、統計学に興味を持ってくれるきっかけになればと思います。筆者は大学に入ってから一切数学をやってきませんでしたが、最低限、数学2Bの統計の基礎の基礎(標本とか標準偏差とかの話)さえ履修していれば2単位分程度の勉強で大まかな分析ができるようになります。それだけで1つ社会に通用するスキルが身につくと思えば、英語並みに役立つ技能だと思いますよ、統計。

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前置きが長くなったので、本題。

 

1 因子分析とは?

「因子分析」は、教育心理学発祥の統計手法で、生徒が持つ「計算能力」や「読解能力」といった潜在的な能力(共通因子)を、テスト結果という目に見えたものから分析するために開発されたといわれています(受け売り)(初耳)。現在ではそうした枠を超えて、政治学からマーケティングまで幅広く活用されている分析手法です。

で、テストの結果からそうした能力を分析することができるなら、その手法を使えば「オタクの性癖から隠れた共通因子を見出すことができるのでは?」と考えたのが今回のアンケートの主目的でした。

ここでいったん話を教育心理学に戻すと、因子分析では「『計算能力』が高い生徒は『数学』や『理科』の点数が高く、『読解能力』が高い生徒は『国語』や『英語』の点数が高い。」といった結果が見えてくるわけです。これは当たり前のことに見えますが、例えば同じ数学が得意な生徒でも、「確率」が得意な生徒と「図形」が得意な生徒では頭の作りが違うことは想像できると思います。

脇道に逸れてしまいましたが、これはオタクでも同じことが言えると思うのです。「貧乳な女子中学生」が好きなオタクと、「陰毛剛毛な熟女」が好きなオタクは、どう考えても頭の作りが違うと思いませんか?(筆者は前者ですが、後者とは少なくとも性の話では分かり合える気がしない。)

こういった分析は、これ以上オタクとオタクが地雷を踏んだ踏まないで無駄に諍いを起こすことのない社会を作り出すための第一歩として、世界平和に資するものだと考えています。おい!ノーベル!!見てるか!!!今年のノーベル平和賞はもらったからな!!!!あっ、イグノーベル賞でしたか。だとしても誰かが温かい気持ちになるなら大歓迎ですけどね

 

2 実際の分析プロセス

というわけで、今回のアンケートで得られたデータをHADという分析ソフトに突っ込んでみます。このソフトは「.xlsm」というマクロ付きExcelファイルの形式で配布されており、Excelに慣れていれば非常に使いやすいソフトになっています。ちなみに、導入したら最初に「名前を付けて保存」によって配布ファイルとは別名でプロジェクトファイルを作っておくのを強く勧めます。

 

2-1 分析準備

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集計データをHADで読み込み

右側の空白セルの「行1」に「顔射、貧乳…」などのカテゴリ名が乗るようにペーストします。「列B」にはここでは「タイムスタンプ」が入っていますが、これは今回のアンケートでは回答者から一切の個人情報を取らなかったため、回答が送信された時間を識別子として用いていることが理由です。普通の分析ならば「列B」には回答者の名前や通し番号を入れておきましょう。データ入力が終わったら、左上の「データ読み込み」をクリックして、次のステップに進みます。

 

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モデリングシート画面

この画面になったら、左上の3つボタンが並んでいるところにある「使用変数」をクリックし、とりあえず「全投入」しましょう。これで分析対象として117の性癖を全選択しました。次に、中央上部の3つ並んでいるラジオボタンの一番下にある「因子分析」を選択します。

 

2-2 データの分析

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因子分析の設定画面

今回の分析では、抽出法にはのちのち一般解を求めるのに役立ち、適合度検定をすることもできる「最尤法」を、回転法には因子間に相関があることを仮定した斜交回転の「プロマックス回転」を使用します。これは現在因子分析を行うにあたっては最もメジャーな組み合わせで、多くの論文でも方法論に採用されているため、それらに倣っています。筆者は文系大学院生であり、出力されるデータの読み方こそ勉強したもののそれを構成するまでの数式や仕組みの部分については説明ができないので、メカニズムが気になった人は自分で調べてください。大学数学の知識が必要です。

ただ、ここでいきなり「分析実行」を行うと、筆者のノートパソコンでは大変なことになってしまう(計算量が非常に多く、30分経っても分析結果が出てこないどころかフリーズしてExcelが落ちてしまいました)ので、大体の計算の目星を付けるためにまずは「スクリープロット」を選択します。

 

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スクリープロット画面

スクリープロット画面にやってきました。ここで、因子分析をするにあたっていくつの因子構造を見出すのかの目星を付けます。右側には固有値という言葉とグラフが出てきますが、文系ならばこれは「大きければ(1以上が目安)元のデータの傾向をよく表している因子である」くらいの認識で良いと思います。ちゃんと学ぶなら線形代数を履修しましょう。今回は必要な因子の数を決定するために「MAP(最小平均偏相関)」という方法を用います。これは「固有値1以上=ガットマン基準」「累積寄与率60%以上」といった簡易的な手法よりも精度が高く、「因子数の過大推定がほぼない」といった点からも、今回の非常に項目が多いデータを集約するのに適しているモデルだと考えたからです。(逆に過少推定がほぼない方法として対角SMC平行分析などがあります。今回はこちらを使ったところ75因子が提案されたのでやめました。https://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/factor2005.pdf や https://norimune.net/657 などが参考になります)

今回はMAPの提案した13因子を採用して因子分析を行います。

 

2-3 項目の取捨選択

先ほどの設定画面に戻り、因子数を「13」として分析を実行します。なお、1回目の分析は「117性癖×139回答者=16,263個」のデータを分析するため非常に重かったです!(約12分全裸待機)

 

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1回目の因子分析の結果

結果が出ましたね。ここから最適な因子構造を推定するのに不適当な性癖(因子分析では本来「項目」と呼びます)を削っていきます。今回の分析では、

・「共通性.160以下」

・「複数因子に±.300以上の因子負荷量」

・「±.400以上の因子負荷量を示す因子がない」

このいずれかに当てはまる性癖を、分析に不適当なものとして分析対象から削除します。今度は「因子負荷量」という専門用語が出てきましたが、「特定の因子に対する適合度」くらいに思ってくれればいいです。ごく稀な例外を除いて1~-1の値を取るので、筆者は相関係数みたいなものかなと思っています。

 

上記の削除基準の元、1回目で52性癖を削除し(上図で赤色になっている性癖です)65まで因子を削ることができました。設定画面に戻り、使用変数をこの65性癖まで減らしてから再度スクリープロット→MAP法で最適な因子数の推定→因子分析を行います。繰り返し因子分析を行うことで117→65→51→48→47と順調に採択される性癖数が減っていきました。6回目の因子分析で、ついに上記の削除基準に当てはまる性癖が現れなくなったので、「8因子44性癖」を今回の因子分析の結果として抽出します。

 

3 分析の結果とその解釈

3-1 分析結果の概観

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性癖因子分析の結果

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性癖因子の因子間相関

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性癖因子分析の適合度検定の結果


ここまでやってきた因子分析の結果をまとめたものが、上の2つの図となっています。上の図の「M」は平均値、「SD」は標準偏差のことです。「Cronbach's α」は日本語では「クロンバックのα係数」と呼びます。これは尺度の信頼性を表す指標で、性癖アンケートで言うならば「多種多様な性癖の人が回答している」「似た性癖の人の答えは似たものになる」という条件に合致していれば高い値をとります(厳密には「分散の和」と「和の分散」の比から計算するものです)。α係数は0.7あれば十分で、0.95を超えてしまうと標本に差が無さすぎる(前者の条件が棄却される)ことを疑う必要があるためむしろ信頼性が揺らぐ、といった指標となります。今回は最も低い第7因子の「体液系」でもα=.757あるため、この性癖アンケートは客観的に妥当な尺度だったといえます。

続いて適合度検定をしていきましょう。適合度検定にはカイ二乗(χ²)検定」というものを用います。これは背理法のような回りくどい検定方法で、性癖アンケートで言うならば「因子分析の結果は回答してくれたオタクたちの性癖をよく説明している」(対立仮説)ことを示すために、「よく説明できていない」という仮説帰無仮説を棄却する、という論理展開をとります。この帰無仮説を棄却するためには、適合度欄に出力されているp値を確認します。平たく言うと、p値は帰無仮説が正しい確率」です。今回は.000と出ており、帰無仮説が正しい確率は0.1%未満であるといえます。基本的にこの値が.050(5%)未満をとれば帰無仮説が棄却され、対立仮説が採択されるので、今回は無事「因子分析の結果は回答してくれたオタクたちの性癖をよく説明している」という対立仮説が採択されました。(乖離度やRMSEAなどについては今回は解説できません、すみません)

因子間相関は全体的に正の相関を示しています。相関の存在を仮定したプロマックス回転の選択も正しかったといえます。「定番系」と「受動系」の相関が高いですが、これはどちらにも人気の高い性癖が集まっているためですね。「定番系」と「幻想系」のみ負の相関を示していますが、絶対値が低いため統計的に有意かどうかは微妙ですね。理由を考察するとしたら、前者はAVでよく見るもの、後者はAVでは見ないものシーメールはここでは存在を無視できるほどニッチな存在なので)ということで、三次元派と二次元派で逆の傾向がある回答をしているからではないかと考えます。これはPart.1にて「三次依存度」との相関係数を見た際も触れていますね。

 

3-2 各因子の解釈

先ほど議論の中で当たり前のように「定番系」とか「受動系」とか言ってましたが、これは筆者が勝手に命名したものですし、ちゃんと説明しなければいけないと思います。なお、「正/負の因子負荷量を示す」と論じている基準は±.200前後です。相関係数ではこの程度の数字があると「弱い相関がある」といえる基準になります。±.100未満は無相関だと考えてよいでしょう。(なお、複数因子に±.300を示す性癖は因子分析の結果として不適であるため、前述の通り事前に削除しています)

 

第1因子「定番系」

「対面座位」「正常位」「後背位」「騎乗位」「パイパン」「中出し」「種付けプレス」「幼馴染」「素人」の9性癖で構成されています。この中だと「種付けプレス」だけちょっと異端かもしれませんが、概ね性的な話題では一般的に見る単語ですよね。44性癖の中で、これらの9性癖は人気ランキング11位までにすべて収まります。低い評価をした回答者が少なく、0~5の6段階で「3」の回答でも下位側として認識される性癖です。(例えば、性癖ごとに回答を標準化(データの「平均0、標準偏差1」への補正)すると、「騎乗位」の「3」と「嘔吐」の「0」はほぼ同じで、およそ-1.13という得点を示します)ということで、これらの性癖を束ねる概念として「定番系」命名します。見栄えが良いので、以降の因子名もこのように漢字2文字+「系」で命名していきます。

特にAVにおけるメジャー概念である「中出し」「素人」は「幻想系」に対して負の因子負荷量を示しています。これは前節の議論を裏付けるものになると思います。「パイパン」「幼馴染」は「濃厚系」に、「幼馴染」はさらに「凌辱系」にも負の因子負荷量を示しています。「ロリ⇒パイパン」は成り立つと思いますし(逆は諸説)、対極の概念である「濃厚系」と相性が悪いのは頷けます。幼馴染派は和姦派なんですね。確かに幼馴染をレイプするのは基本的にそれまでの人間関係とは何の関係もない男(ウェイかDQN)ですもんね。

 

第2因子「受動系」

「パイズリ」「足コキ」「フェラ」「素股」「手コキ」「射精管理」の6性癖で構成されています。概念として似通ったものなのはよく分かると思うのですが、それを漢字2文字でどれだけ端的に表現できるのか、命名はかなり悩みましたが、「女性が主導権を持ち、男性はただそれを享受する」という共通点から「受動系」命名します。この因子が上から2つ目に来るあたり、男性の草食化が進んでいることがよく分かりますね。勿論、奉仕されたいという支配欲と表裏一体でもあるので打ち消し合ってプラマイゼロな気もしますけど。どちらの理由にせよ、準メジャー性癖枠なのは間違いないでしょう。

面白いのが、「パイズリ」と「体液系」に負の因子負荷量を示し、「足コキ」は逆に正の因子負荷量を示していることです。あまり大きく異なるプレイだとは思えないので謎です。SMプレイだというなら「凌辱系」とも高そうなものなんですけどね。(参考:「足コキ」×「ドM」の相関は.337、「ドS」との相関は.435でむしろS寄りの性癖)

 

第3因子「凌辱系」

「レイプ」「輪姦」「凌辱」「寝取られ」「寝取り」「3P(男2人・女1人)」「援助交際」の7性癖で構成されています。「受動系」からうって変わって完全に男性主導の性癖ですね。中でも因子負荷量が高い「レイプ」「輪姦」「凌辱」の持っている共通概念から「凌辱系」命名します。「援助交際」だけ少し毛色が違いますが、アングラな雰囲気が漂うのは似ていますよね。

一見似ている「レイプ」「輪姦」「凌辱」ですが、「輪姦」は「体液系」に負の因子負荷量を示し、「凌辱」は「体液系」に正の因子負荷量を示す代わりに「濃厚系」に負の因子負荷量を示しています。「レイプ」は「凌辱」と似ているものの、「凌辱」と違って「体液系」に対してはほぼ無相関となっています。

「寝取られ」「寝取り」が「濃厚系」に対しても正の因子負荷量を示しています。これは簡単なロジックで、「濃厚系」に属する「人妻」に対して「寝取られ」が.419、「寝取り」が.462という正の相関を示していることが原因です。まあ寝取る相手がいなきゃ成立しないですし、不倫と言われて問題になるのは相手が人妻だった時ですもんね。彼女を寝取る程度じゃよくある話だと。

「3P(男2人・女1人)」が「幻想系」に対して正の因子負荷量を示しているのですが、これはあまり見当がつきません。個別に相関をみると「ノンケ男の娘」に.246、「ホモ男の娘」に.179と若干の正の相関は見えますが…男の娘にあんまり詳しくないのですが、3Pをよくされるんですかね?

 

第4因子「姉妹系」

「姉妹姦」「実姉」「義妹」の3性癖で構成されています。これはもう異論ないですね。「姉妹系」命名します。分析していて面白かったのが、「義姉」と「実妹」は途中で削除されたという点です。(単に統計のプロセスでどちらも複数因子に高い因子負荷量を示して削除されたのが原因です。「義姉」は「のちの濃厚系」に、「実妹」は「のちの幼女系」に高い因子負荷量を示していました。初回は13因子が抽出されこの結果とは構造が異なるため「のちの」という表現をしています)「実姉」×「義姉」が.607で、「実妹」×「義妹」が.521であり、パッと見では似ている概念ながら強い相関は示さなかったというところからも、これらは別の概念として捉えられていることが分かります。なお、「義姉」が49位で「実姉」が75位、「義妹」が52位で「実妹」が86位なので、人気自体はどちらも義理の方が高く、どちらも姉の方が高くなっています。

他と比べると少しインパクトに欠ける因子に見えますが、因子負荷量を見ると、「姉妹系」は他の因子とは軒並み無相関であるため、れっきとした独立因子であることが分かります。

 

 第5因子「幼女系」

 「女子小学生(1~3年生)」「女子小学生(4~6年生)」「女子中学生」「園児」「貧乳」の5性癖で構成されています。園児・小学生・中学生は現実で手を出したら完全にアウトですし、残る「貧乳」もそれらに対する必要条件の1つだといえる(「ロリ巨乳」として別ジャンルが作られるくらいには自明のものとして扱われてますね。これも設問に入れればよかった。筆者は「1」ですが種島ぽぷらさんは可愛いと思います)ので、全て併せてこの因子を「幼女系」命名します。「パイパン」がここに入らなかったのは、「幼女系」への得点がそこまで高くない回答者からの人気もかなりあったからだと考えています。(平均点の違いからかなと思ったのですが、「パイパン」は3.68で、「幼女系」で一番高い「貧乳」は3.58あるため、そこが原因ではないみたいでした。)

他の因子との関係を見てみると、「園児」が「定番系」に、「貧乳」が「濃厚系」にそれぞれ負の因子負荷量を示しています。「幼女系」は、他の因子に比べて相互の性癖の相関係数がかなり高い因子なのですが、その中では「園児」は少し異端な存在で、かなり多くのオタクを「さすがに園児はダメでしょ」と我に返らせる性癖だったようです。平均値も1.58(110位)とかなり低くなっています。こうしたことから、オーソドックスな性癖といえる「定番系」との親和性が低いようです。「貧乳」の方は考察するまでもありませんね。「濃厚系」には「貧乳」の対義語である「爆乳」が含まれているからです。この両者の相関係数は-.173で、弱い負の相関とはいえこのデータ群の中ではかなりはっきりと負の相関を示している性癖です。この程度で済んだのは、「おっぱいはみな平等に尊いという釈迦のようなオタクがたくさんいたからでしょう。また、「貧乳」は「姉妹系」に正の因子負荷量を示しています。「姉妹系」の各性癖との相関係数は「女子中学生」や「女子小学生(4~6年生)」の方が高いので、ちょっと不思議でした。

 

第6因子「濃厚系」

「ぽっちゃり」「熟女」「肥満」「人妻」「爆乳」「陰毛剛毛」の6因子で構成されています。年を重ねて熟成された豊満な身体に対する性欲からなっていると解釈できますね。汗だく・汁だくなプレイのことを「濃厚」だと表現しているのを見たことがあるため、これらの性癖を代表する名前として「濃厚系」命名します。ここから先の3つの因子は、かなり人を選ぶものになってきます。これらの因子への得点の高低は、次回考察するオタクの分類をする際にかなり重要になってくる要素です。そして、今回の調査から分かる通り、「どんな性癖でも愛好家がいる」ので、理解できなくてもいいからくれぐれも自分の物差しで罵倒しないように!(「濃厚系」の得点がかなり低かった筆者自身の、このブログを書くにあたっての自戒でもある)

他の因子との関係でとても際立っているのが、「肥満」が「凌辱系」に負の因子負荷量を示していること。「肥満」は「凌辱」に-.126、「レイプ」に-.119と負の相関を示している性癖で、相反するとまでは言えませんがかなり親和性が低いものであることが分かります。「肥満」「ぽっちゃり」に求められているのは「包容力」であって、彼女らを乱暴に扱うことには快感を覚えないということなのでしょうか?

「人妻」と「凌辱系」の関係は前述した通り。また、「爆乳」が「受動系」に正の因子負荷量を示しています。「爆乳」は「パイズリ」に.343という正の相関を示しているため、主にこれが原因かなと思います。実際爆乳嬢の風俗ものは次元を問わず多く流通していますからね。

 

 第7因子「体液系」

「おもらし」「唾液」「飲尿(させる側)」「嘔吐」「浣腸」の5性癖で構成されています。どれも少しメジャーからは離れた性癖で、「身体から発される液体(あるいは、それを発している状態)に対して興奮する」という点で共通しているかと思います。分析途中で削除された性癖として、採択された「浣腸」と似ている「アナルファック」「フィストファック」もここに属していました(「アナルファック」は初回の因子分析において「緊縛」や「バイブ」などで構成していた「道具系」と言えそうな因子にも高い因子負荷量を示したため、「フィストファック」はそもそも「のちの体液系」への因子負荷量が足りずに削除されました)。「体液」と「身体の穴」に関する性癖といえるため、まとめて「体液系」命名します。今回調査しなかった性癖では「経血」「産卵」もここかな、と個人的に考察しています。ちなみに、今回は「幻想系」との相関係数は.668で相対的にみて高いとは言えませんが、回答数が100を超えた時に試験的に行った分析では「獣姦」や「ケモナー」がこちらと一緒になるなど、ある程度の親和性があるようです。

 「浣腸」は、「男性側が働きかけて女性にそれをさせる」という能動的な性格から「受動系」に対して負の因子負荷量を示しています。また、「嘔吐」や「飲尿(させる側)」が「凌辱系」に対して少し低いですが正の因子負荷量を示しているのは、凌辱系AVのパッケージを想像すれば納得できると思います。被凌辱対象であることを売りにしてるAV女優って大体どっちのプレイも撮ってますよね。

 

第8因子「幻想系」

「男の娘(中身はノンケ)」「男の娘(中身はホモ)」「ケモナー」の3性癖で構成されています。今回抽出した因子構造においては最後の因子ですね。最終的には削除されましたが、「ふたなり(玉あり)」「ふたなり(玉なし)」といった性癖もテスト段階では採用されていました。(「のちの体液系」にも高い因子負荷量を示したために削除されました。また、「玉あり」の方がより後のプロセスまで残っていました。)これらの性癖の特徴として、実現可能性がないことが挙げられます。実際「三次依存度」に対してはいずれも負の相関を示しており、「ケモナー」×「三次依存度」の相関係数は-.245と、今回の44性癖の中で1位、117性癖全体の中でも3位という高い負の相関となっています。こうした性格から、この因子は二次元の創作物の中で見ることができるファンタジックな性癖、という意味を込めて「幻想系」命名します。

他の因子との関係を見てみると、「ケモナー」が「幼女系」に正の因子負荷量を示しています。これは前述した「三次依存度」との関係が影響しており、.300前後というあまり高くはない数字ではありますが、「女子小学生」「園児」など同じく二次元寄りの性癖に対して正の相関を示しているのが原因だと思います(これは「男の娘」にも言えるので、なぜ「ケモナー」だけが正の因子負荷量を示しているのかは分かりません)

 

4 まとめ

 今回の記事では、「『性癖』に関する意識調査」で得られた117の性癖に対する139人からの好感度データを、「因子分析」を用いて分析してみました。その結果、オタクの性癖を分類すると「定番系」「受動系」「凌辱系」「姉妹系」「幼女系」「濃厚系」「体液系」「幻想系」という8つの因子が抽出され、この構造は44の性癖から説明できるということが分かりました。今後の課題としては、この8因子構造がオタクの性癖を説明するのに本当に適したモデルなのかどうかを検証するために、今回の調査では問わなかった「産卵」「経血」「ロリ巨乳や、男性を性的対象として捉える、女性やゲイ向けの性癖を含めての追試を行うなど、性癖尺度のブラッシュアップに努めていければと考えています(論文の最後にありがちな「やるとは言ってない」今後の課題について考察するやつ)

 

Part.3では、予告しておきながら紙面が膨れ上がって書くことができなかったクラスタ分析」を用いて、この性癖尺度で得られた得点傾向からオタク側を分類することを試みます。もう既に分析は進んでいるのですが、「雑食オタク」「ロマンチストなオタク」「心の清らかなオタク」などいろいろなオタクがいました。性格診断系のWebサービスを使えばこのデータに基づいて「性癖通信簿」みたいなものも作れそうですが、筆者が考えているモデルによって診断を作れそうなWebサービスでは「わいせつな内容を含むもの」利用規約で禁止されていました。これは序章でも述べたように世界平和に資する調査であるにも拘らず、門前払いされるというのは何とも遺憾なものです。

ともかく、次回をお楽しみに!!!!!

 

2020/4/25更新:Part.3上がりました!

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5 さいごに ~統計を学びたい人のために

今回使用した分析ソフトであるHADが配布されているブログでは、因子分析を初めとして統計分析の方法やコツについてとても分かりやすく解説されています。中級者向け以上の内容とは思いますが、独学で研究に使えるレベルまでの統計学を勉強するなら非常に役立つ場所です。

書籍を買って勉強するなら、Excelによる解説つきのものがオススメです。勿論自分で計算できるのに越したことはないのですが、統計を学びたい多くの人にとって、最終的に必要にならない大学レベルの数学知識は負担になるだけだと思うので。

www.amazon.co.jp

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筆者から例として挙げておきます。今回の記事を書くのにも大いに参考にした本です。実際には本屋に赴いて自分にとって分かりやすい記述がされている本を買うのが一番良いと思います。また、学術的な作法を学ぶならば、自分が関心のある領域で因子分析が用いられている論文を読むのが一番です。論文を読むことで分析のプロセスや分析の際に書かなければいけないことなどを学べますし、そういった論文のフォーマットの部分は模倣しても咎められないどころか、一般的に推奨されてますしね。

あとは、具体的に「この単語が分からない」ということがあれば、本よりもインターネットが役立つことも少なくありません。マーケティング系のWebサイトがかなり分かりやすく解説してくれています。

 

筆者も統計学そのものが専門だというわけではなく、絶賛勉強中で発展途上の身なので、必ずしも今回の解説が正しいものであるという保証はできません。もし分析をされる際は、様々な文献をあたることで、正しい方法で分析ができるよう心がけてください。

感想や「こんな性癖も調査したほうがいいと思う」などのコメントもお待ちしております。

それでは、よいオナニーライフを。

 

つぶグミはいいぞ。( @kirsch2293 )

 

謝辞

前述したように、この記事を書くにあたり分析のためのソフトウェアとしてHADを用いました。こんなことに使ってしまい大変申し訳ございませんでした。修士論文でもお世話になりますが、そちらではもっと社会貢献に資する用途で用いますのでよろしくお願いいたします。